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メーカー聴き比べ  動画・CD・DVD紹介

■メーカー別 動画・CD・DVD紹介

ピアノ演奏を録音したCD・DVDは世の中に数知れず流通していますが、どこのメーカーによる楽器が使用されているのか、意外とご存知ない方も多いのでは?

ピアノを扱う者としてプロフェッショナルでありたいという自覚と探究心から収集し始めた音楽資料が、今なお無限増殖しています。せっかくですので各メーカーの“音”にこだわったコーナーを作りました。
拙文ながら個人的な感想も記述しますが、楽器の音を判断するには当然ながら「聴く」こと、百文は一聴に如かずです。

気になった音源を入手しましたらオーディオに耳を傾けて下さい。
音色の違い、曲と楽器の相性、もちろんアーティストの演奏にも。
何故その楽器で録音したのか思索にふけるのもまた一興ですよ。
聴き込むうちに貴方もディープな音の世界にハマるかもしれません。

とくにピアノ購入を考えている皆様には参考にして頂きたいです。
同じメーカーのピアノでも、機種や調整によって音が違うことにきっと気づくはずです。もしご自身の好みを発見して貰えたら幸いですね。
メーカーの傾向を知りたい方のお役に立てることを願っています。

♪ペトロフ Petrof
♪スタインウェイ Steinway&Sons 
♪ベーゼンドルファー Bosendorfer

♪ベヒシュタイン Bechstein      ♪ファツィオリ Fazioli
♪その他 海外メーカー  ♪ヤマハ Yamaha  ♪カワイ Kawai

勉強のため購入した資料もいつしか1千枚を超え(苦笑)クラシックもジャズもすぐ廃盤になってしまうのが哀しき宿命です・・・。

“好み”を知るには“違い”から

「思うのだけれど、クラシック音楽を聴く喜びのひとつは、自分なりのいくつかの名曲を持ち、自分なりの何人かの名演奏家を持つことにあるのではないだろうか。」
村上春樹『意味がなければスイングはない』(春秋文庫)より

村上春樹さんの小説を読んでいますと、人物や場面を効果的に演出する脇役として、しばしば“音楽”が登場します。
このエッセイでは、クラシック、ジャズ、ロックからJポップまで、彼独特のユーモアを交えて音楽への深く幅広い愛情が親しみやすい文章で書かれています。村上作品を愛読する音楽好き人間にはオススメの一冊です。私も彼のように流れるような文体で音楽を語れたら良いのですが・・・。

村上氏は、シューベルトのソナタでもマイナーとされる第17番D850を愛聴しているとのこと。15人の演奏家を聴き比べた感想を優れた洞察力と表現力で語っています。「我が意を得たり!」と感じ入った一節をその中に見つけましたので、恐縮ながら引用させて頂きました。

まさにクラシック音楽の愉しみ方とは、何人かの演奏を比較しながら、楽曲の良さや聴き手本人の好みを再認識することだと思います。
ピアノ選びも同様に考えてみましょう。メーカーごとに音色を比べて、性格の違いを知って、初めて自らの感性にピッタリ合う楽器と出会えるのではないでしょうか。ぜひ“自分なりの音”を探してみて下さい!

音の“好み”は人それぞれ

「ホロヴィッツのピアノに関しては、彼の好みに従って、彼が好む音色を出せるように調整してある。しかし、誰もがホロヴィッツのピアノの音色を好む必要は全くないのだ。」
フランツ・モア著/イーディス・シェイファー構成/中村菊子訳
『ピアノの巨匠たちとともに』(音楽之友社)より

20世紀を代表する伝説的ピアニスト、ウラディミール・ホロヴィッツVladimir Horowitz(1903~1989)。彼が愛したNY製スタインウェイが紡ぎ出す“明るく煌びやかな音色”は多くの聴衆を魅了しました。

しかしホロヴィッツのピアノのような輝かしい音を市販のNY製スタインウェイに期待してしまうと、きっと実物を試弾したとき戸惑うはずです。新品のNY製スタインウェイは柔らかい音質がスタンダードである事実は、まだまだ日本では“知る人ぞ知る”といったところでしょうか。
専属調律師フランツ・モア氏も、ホロヴィッツのピアノは彼の希望に合わせた音色やタッチに調整していたことを著書で述懐しています。
(その悪戦苦闘ぶりを知りたい方はこちらをどうぞ→)

演奏会やレコーディングに使われるピアノの中には、演奏家(あるいは調律師)の好みに調整されて、メーカー標準の音色と趣きが異なるケースがあります。そうした背景を知らずに「このメーカーの音はこんなものか」と悪く誤解されてしまうと全くもって残念です。

あらぬ偏見を防ぐため、このコーナーでは同じメーカーの音源を複数ご紹介しています。様々な個性を比較し、あるいは平均化することで、各メーカーが目指す音への理解を深めて貰えると有難いです。

“あなた好みの音”をCDに見つけたなら、思い切って調律師にお願いしてみては?ひょっとしたら憧れの音色を叶えてくれるかも・・・。
ただしホロヴィッツばりに無茶な注文するのはご遠慮下さい(^^;